グローバル・ガバナンスという用語が国際関係論の学問分野で使用されるようになって十数年経過し、国内外の多くの大学ならびに大学院でこの言葉を冠した科目やコースが設定されています。また、グローバル・ガバナンスというタイトルの学術雑誌も刊行される一方、グローバル・ガバナンスに関する多くの本も出版されています。にもかかわらず、グローバル・ガバナンスという概念が国際関係論という学問分野にしっかりと根付いたとは言いがたい状況にあるばかりか、現実の国際社会は、テロ行為の蔓延、海賊行為の頻発、人権侵害、貧困、金融・財政危機、環境破壊など、多くのグローバルな問題に直面しています。第二次世界大戦後形成された世界秩序、すなわち、国連を中心とした多国間主義に基づく集団安全保障体制と覇権国アメリカの主導で形成されたブレトンウッズ体制は、ともに深刻な制度疲労に陥っています。大国アメリカを含む主要OECD諸国といえども、一国あるいは数カ国(G8など)のみでは今日の多種多様な課題にもはや対応できず、例えば、国際金融問題や気候変動問題などのように、経済の新興国を含めたG20首脳会議を通したガバナンス体制の模索が始まっています。
このように冷戦体制の二極構造からEUや中国も含む多極構造への転換が始まって20年経過しようとしている現在、国際政治はどのような変容を遂げてきたのでしょうか。国連を中心とした国際ガバナンスやブレトンウッズ体制をどのように評価し、今後の世界秩序の安定を保つために、ともにどのような改善が求められるのでしょうか。さらに、多国籍企業や国際NGOsがグローバルな問題の解決に向けて必要不可欠な存在になった今日、冷戦後の国際社会におけるこれらの非政府組織の役割を客観的に評価して、今後の世界秩序形成における彼らの国際ガバナンスへの参加をより制度的なものにしていく必要があります。以上のことすべて、グローバル・ガバナンスの制度化を要求しています。
こうしたグローバル・ガバナンスに関する基本的な認識や問いを踏まえ、本研究所では、学問分野におけるグローバル・ガバナンス研究の進展に関する調査研究と実践分野でのグローバル・ガバナンスの実態を、研究協力者などの専門領域に即して、また、具体的な事例に基づいて研究することを目的としています。すなわち、国際法、EU・アフリカ・アジアの地域統合研究、国際人権レジーム研究、国際開発研究、さらには地球環境政治研究などの各専門分野からのグローバル・ガバナンス研究を推し進めていきます。最終的には、こうした研究の総括を通してグローバル・ガバナンス概念の学問的ならびに実践的意義を明らかにします。
| 所長 | 太田 宏 (国際学術院 教授) |
| 研究所員 | 池島 大策 (国際学術院 教授) | ||
| 片岡 貞治 (国際学術院 准教授) | |||
| 勝間 靖 (国際学術院 教授) | |||
| BACON, Paul Martyn (国際学術院 准教授) | |||
