本研究では、「モノ」の世界からイスラーム地域研究を実証的に進めることを主目的としている。これまでに日本調査隊によって30年間にわたってエジプトを中心とするフスタート遺跡およびラーヤ・トゥール地域を中心とする紅海沿岸地域の港湾遺跡の総合的考古学的調査が展開されてきた。これによって、日本におけるイスラーム考古学の礎が作られ、資料の集積が行われた。これらの原資料を活用して、「モノ」の成り立ちや製作技術、「モノ」を通してみた生活文化の変容と文化交流など、様々な観点から「モノ」と歴史、文化、社会に関連付けることで、新しいイスラーム地域研究の方法論を確立したいと考えている。
イスラーム考古学は、文化の基層となる生活文化の復元を主眼としている。建築物や陶器、ガラス製品、金属製品などに表わされる物質文化の中には、精神文化では残しきれない歴史的情報が存在している。そして、それらはイスラーム世界全体およびその周辺地域、東西交易を通じたアジア、ヨーロッパ世界との交流を物的証拠として残している。とくに、港湾都市においては、「異文化交流」の中で、「ヒト」「モノ」「情報」が交錯し、相互に影響を及ぼしながら都市が形作られ、ネットワークが形成されていった。
そこで、「モノ」に関わる考古学、文献学、建築学、化学、人類学などの方法論を活用・融合させて比較研究を行うことで、「生活文化」の中に見られる「知の技術」の浸透と模倣、伝播、発展の過程とその相互関係について解明する。さらには、物質情報から示される、イスラームとユダヤ教、キリスト教などの異宗教・異文化の混在する社会と文化の成り立ちをも考察し、「モノ」の観点から過去を鑑みて、現代社会における文化融合のあり方をも提言したい。
これまでのイスラーム考古学調査概要

- 真道洋子(イスラーム考古学研究所・主任研究員)

- 高橋信雄(花巻市立博物館・館長)
中井泉(東京理科大学・教授)
西本真一(サイバー大学・教授)
尾崎貴久子(防衛大学校・専任講師)


- 湯川武(早稲田大学)


- 栗田禎子(千葉大学)

- 小林春夫(東京学芸大学)






















































